デジタルメディア研究会・報告 2002.11 |
写真 −藤間紫穂/信乃輔さんの舞いと河口さんのCG)
次に アート・ギャラリー出展作品について串山氏から『今年は作品製作のプロセスとその内側にスポットライトを当る、"ビハインド・ザ・シーン"(behind the scenes) の展示や、"ワーキング・アーティスト"(Working Artists) に指名された作者が同時進行形で制作デモやコラボレーションを行っていた』。串山氏が取り上げた代表的なアーティストは次の通り。イリノイ大学グループによる、日本神話をテーマにした立体視インスタレーション"うずめ"("UZUME")、ニューヨークのデジタル・イメージ・デザイン社の研究者(Bradford Paley氏)による"Text Arc"。合衆国ミズ−リ州のアーティスト(Fernando Orellana氏)による"ドローイング・マシ−ン"、スイス・バーゼル州の研究者によるインスタレーション作品"affectiveCinema"、合衆国オハイオ州クリーブランド芸術専門学校の研究者(Ioannis Yessions氏)による遺伝子を扱った"ホモ・インデシュウム(Homo Indicium)"など。 現地で筆者が特に魅かれたのはまず"Text Arc"。作家Bradford Paley氏は"ワーキング・アーティスト"に指名された実績あるアーティスト。この作品には"Text Map"と言う別名もあり、ことば(テキスト)の連鎖反応図をイメージ化した。作品は思考の中で、次々に浮かんでは消えていくテキストを図式化し満天図のように投影した。 「ハムレット」の作品では、'ハムレット'、'前国王の子'、'現国王の甥'、'オフィーリア'、'シェークスピア'、などのテキストが次々に浮かび上がり消えていく。'流星' のシーンでは、衝突した"テキスト"は一段と輝きを増す。'デンマーク国王'、'父方、母方の親族'、'取り巻き'などが激しく明滅し消えていく。言葉(テキスト)と思考方法、欧米文化の体系の違い、関心事の個人差など作品を通して深く考えさせられる。 同じく次の作品、"うずめ"("UZUME")はいわゆる4次元リアルタイム映像ケーブ(CAVE)による作品。日本神話の天照大神が天岩戸に姿を隠したとき、舞によって大神を誘い出したという、天鈿女命(あめのうずめのみこと)の故事による。ケーブ(洞窟)の中のパーフォーマンスと残像の軌跡が、空間に次々に描かれる。"UZUME"の作者(Petra Gemeinboeck氏)にこの古代の巫女神についての印象を尋ねたいと思ったが、『日本神話の中の不思議な舞い』と言う以外の解釈は聞き出せなかった。 カレン・サリバン アートギャラリー委員長は、『アーティストが想像力を発揮し、どのようにディジタル・メディアによる作品創りを行っているのか分かるように展示した。64人以上の作家達がスケッチ、ダイアグラム、記録ビデオ、解説等により、それらを詳細に展示している』と述べていた。 最初にお断りしたように紙面の関係も有り、最後に為ヶ谷氏、前田氏、森山氏の報告の要旨のみをご紹介する。 為ヶ谷氏は、“機器展示”について専門分野の立場からHD・高精細映像に関する情報や各種変換ソフトなど詳しい報告があった。"コンピュータ・アニメーション・フェスティバル"は最優秀賞となった"The Cathedral"(Tomek Babinski, Platige Image, Warsow)を紹介していた。前田氏は"エマージングテクノロジー"の出展者の立場から苦心談を語っていただいた。このコーナーはロボットなどのように人間と機械との関係をより良くする技術を開発し、そのデモの展示部門で、日本からは筑波大学などと共に東大が出展に力を入れている部門でもある。同氏は東大から今後NTT本体に移られて基礎研究を続けられるという。 森山さんのリンツの"アルスエレクトロニカ2002"の報告がビデオを交じえてなされた。昨年の "アルスエレクトロニカ2001"の報告に次ぐものであり、年々日本人の関心が高まっている。紙面の関係から詳細は別の機会に譲りたいと思う。以上(本稿は日本映像学会会報2003.1.1号の筆者寄稿文に基ずくものです。)デジタルメディア研究会・報告 2002.6 |
シンポジウム「映像メディアの表現力/河口洋一郎のCG世界」(主催:日本映像学会デジタルメディア研究会、会場:茨城県つくば美術館−5/25)は、この日の主役、河口洋一郎氏のCG上映とウエァラブル・パーフォーマンスから始まった。
場内が暗転し、CG映像「ジェモーション」(growth とemotion の合成語)が大スクリーンに投影されて、あたかも海底に群生する藻のような生命体が踊り狂い、感情の起伏を激しく表わしている様子が映し出された。
大スクリ−ンの前では、「おどる詩人の会」(筑波大生4人女性2)扮する菅笠姿の農民が沖縄民謡に合わせた踊りを舞った。踊り手の身体には映像をコントロールするウエァラブル・コンピュータ(身につける)が取り付けられていて、親・コンピュータにケーブルで結ばれている。
300インチという大型スクリーン上には、舞いの動きに敏感に反応し、リアルタイムに計算されるデータによって、CG映像「ジェモーション」の形や色、音を刻々変化されて映し出される。
河口氏の解説によれば「CGは宇宙空間の広がりの可能性を求めた作品であり、この映像をコントロールするウエァラブル・パーフォーマンスにより、ステージ空間に未知の宇宙空間を表現する狙いがある」とのこと。
壮大なパーフォーマンスが終わり場内が明るくなると、この日わざわざ東京から参加された元宇宙飛行士毛利衛さんが紹介され、討論会が始まった。
討論会のスピーカーは、伊藤俊治(美術評論家、東京芸大教授)、河口洋一郎(CGアーティスト、東大教授)、浜野保樹(司会、メディア論、東大大学院助教授)の各氏。
(注:このシンポジゥムの各氏の発言内容については、日本映像学会報に掲載の予定です。)
「・・スペース・シャトルに乗っていると、オーロラの
カーテンの中をスートとくぐり抜けていきます」と語った、
元宇宙飛行士・毛利衛さん[写真:左]と、河口洋一郎さん
(筑波ジャーナル新聞会写す)